002 くらし

 

中秋の名月こよひは十五の夜

 

 ひと雨ごとに秋の気配が深まる季節。夜空の月もひと際鮮やかさを増す。世にいう「中秋」とは、秋の真ん中を意味する語で、陰暦の815日を指す。一方「仲秋」とは、秋三ヶ月の「中」、つまりは陰暦8月全体を指し、混同されがちだが両者の意味は異なる。

 改めて、中秋の名月。今年('12)の暦では930日。観月と呼ばれる月見行事の起源は中国にあり、里芋の収穫祭だったというのが有力説。日本への伝来は奈良から平安時代の頃。お供え物の月餅は、日本に伝わり月見団子となり、その年の月数(旧暦)だけ飾られる。平年は12個、閏月のある年は13個。日本では、中国にはない十三夜(別名『後の月』、『栗名月』)にも月見をする習慣があり、今年は1027日にあたる。十五夜と十三夜は対とされ、片方の晩のみ観月するのは嫌われた。ところで中秋の名月、必ずしも満月とは限らない。理由は旧暦の日付と月形が微妙にずれるため。今年は満月。月光に酔いながら、満ち欠けの妙を語り合うのもまた愉しいもの。

 (初出「大人のくらし/風流生活デッサン」を加筆)

001 くらし

 

江戸か南部か火鉢か炭か

 

 軒下でわずかな風に反応し、涼し気な音を響かせる風鈴。暑さを和らげる夏の風物詩の起源は中国にあり。元は占いに使われていたという。竹林のなかに下げられ、風向きや鳴り方で、吉凶を占った占風鐸(せんふうたく)が風鈴のルーツとか。日本へは、仏教と共に僧侶たちによって伝えられ、寺の建造物の四隅に掛かる「風鐸」の名で、魔除け・厄除けに使われた。鎌倉時代には、名僧法然上人により風鈴(ふうれい)と名づけられ、やがて風鈴(ふうりん)と呼ばれるように。享保年間(1700年頃)にはガラス製が世に出始め、1800年頃には庶民に大流行。ガラス製の「江戸風鈴」、南部鉄製の「南部風鈴」が現代の両横綱。真鍮やアルミを火鉢状にした「火鉢風鈴」や紀州の備長炭を使用した「炭風鈴」など、今では姿形も多彩なタレントたちが音色を競う。エアコンを止め、しばし耳からの涼で、省エネ生活を優雅に楽しむのもまた一興。但し、昨今は住宅事情により、風鈴の音も人によっては生活騒音に感じるというご時世。夜間や強風の日は、外しておくのが「厄除け」の秘訣。

(初出「大人のくらし/風流生活デッサン」を加筆)