001 ファッション


カーゴ・パンツ その必然と主張 

 僕たちが生きる時間のインデックスは、サバイバルとリラクセーションに二分されてしまった。ノアの方舟とも思える苦難を得て、モノ選びの指標は否応無く変容した。惑星のエネルギー放出への対処を、僕たちは一時も忘れてはならない。

一本のカーゴ・パンツに、そんな気概を込めるのはシリアス過ぎるだろうか。貨物船の乗員たちの仕事着に出自を持つこのボトムスこそ、サバイバル・ライフのワードローブだ。金山労働者の作業着だったジーンズが、’60年代の反戦運動のシンボルになったように、カーゴ・パンツもやがて、明確なメッセージを放つサイン・アイテムになるかもしれない。

ファッションとは『宗教や文化、慣習にとらわれずに、全て取り込んで解放すること』とゴルチェは語った(朝日新聞2011年/623日版より)。けれど、今、この国でその喜びを享受するには大いなるリスクを伴う。ファッションで主張すべくは、生への対峙方法を示す自己変革の姿だろう。もちろん、21世紀的スタイルの意匠は譲れない。自己判断の放棄の強制、あるいは無意識な迎合を象徴するアーミー服など、まっぴらご免だから。

膨らみを抑えたスリムなラインは、着る者を残酷に選ぶ。膝上に設けられたポケットのほどよい大きさ、そこに備わる薄めのマチ。皺や気象、汚れを気にすることのないコットンに、現代のすぐれたマテリアルであるポリウレタン繊維が加われば、ストレッチ感を得て自由性はさらに高まる。あくまでもしなやかに。どこまでもタフネスに。エレガントさを失わずに機能的であること。サバイバル・ライフに相応しいキラーアイテムの条件だ。

(カーゴパンツ/ESTNATION)